2015年のブロードウェイにてトニー賞12部門ノミネート中最多4部門を獲得したミュージカル『パリのアメリカ人』が、いよいよ2021年10月15日(金)より全国順次限定公開される。今回のSCREENコラムでは、バレエとミュージカルが融合した本作の見どころとそのエンターテイメント性について迫りたい。(文:宇田夏苗)
カバー画像:『パリのアメリカ人』より ⒸAngela Sterling

ブロードウェイが絶賛!

画像1: 『パリのアメリカ人』 ⒸAngela Sterling

『パリのアメリカ人』

ⒸAngela Sterling

松竹ブロードウェイシネマの楽しさは、海外の劇場の雰囲気をそのまま味わえること。今回上演される『パリのアメリカ人』では、観客たちがバレエやダンスに魅入っている空気感がスクリーンから伝わり、ワンシーン踊り終える毎に感嘆の拍手が湧き上がる。

本作品の原作は、ジーン・ケリー主演のミュージカル映画『巴里のアメリカ人』(1951)。同じくケリーの主演作『雨に唄えば』(1952)と並び称される名作で、第24回米国アカデミー賞で作品賞の他、最多6部門にてオスカーを獲得している。

画像: 映画『巴里のアメリカ人』(1951)

映画『巴里のアメリカ人』(1951)

それだけに舞台化のニュースは大きな話題となり、2015年のブロードウェイ開幕時には各メディアより以下のような賞賛が寄せられた。

音楽と動きの融合。アメリカのミュージカルシアターに息づくロマンスへの敬意が込められている
── New York Times

リズムと歓喜を持ったミュージカル!
── USA TODAY

映画『巴里のアメリカ人』にインスパイアされた、息を呑むようなミュージカル!
── Broadway World

クリストファー・ウィールドンの「パリのアメリカ人」には、ダンサーの美しさがふんだんに盛り込まれている
── Variety

なぜここまで人々を魅了させるのか、本作の魅力に迫りたい。

本物のバレエダンサーが踊り、歌う!

画像2: 『パリのアメリカ人』 ⒸAngela Sterling

『パリのアメリカ人』

ⒸAngela Sterling

『パリのアメリカ人』の主演を務めるのは、なんと現役のバレエダンサーたち。主演ジェリー役を演じたロバート・フェアチャイルドは名門ニューヨーク・シティバレエ団でプリンシパルの経験を持ち、ヒロインのリズ役を演じたリャーン・コープは英国ロイヤル・バレエ団のトップバレリーナだ。

劇中で繰り広げられるステップ、ターン、リフトといった洗練された技の数々は、確固たるバレエ・テクニックがなければ表現できないもの。その踊りは饒舌で、まるで台詞のように肉体が“語る”瞬間を何度も目撃する。

もちろん、彼らは踊っているだけではない。ブロードウェイクオリティーの演技と歌でも魅了する。こんな才能がいるなんて!と驚くばかりだ。

バレエとガーシュウィンの名曲が響き合う

画像3: 『パリのアメリカ人』 ⒸAngela Sterling

『パリのアメリカ人』

ⒸAngela Sterling

演出・振付のクリストファー・ウィールドン自身、英国ロイヤル・バレエ団、ニューヨーク・シティ・バレエで活躍したダンサー。世界の第一線で数々のバレエ作品を手がけてきた彼は、ミュージカル初演出となった本作で、その才能を開花させている。

見せ場のひとつ、リズとジェリーによるパ・ドゥ・ドゥ(バレエにおける男女二人の踊り)からは、運命的にめぐりあった二人の鼓動、喜びが全身から放たれ、言葉にならない感動を与えてくれる。

美しく流れるようなステージング、現代アートさながらのボブ・クローリー(衣裳も)の美術もまた踊っているようにみえる。そして『パリのアメリカ人』といえばジョージ・ガーシュウィンの音楽だ。全編を彩るガーシュウィンの名曲の数々は、いずれも小粋で魅惑的で、聴いているだけで踊り出したくなるほど。

大人の心に訴えるラブストーリー

画像4: 『パリのアメリカ人』 ⒸAngela Sterling

『パリのアメリカ人』

ⒸAngela Sterling

バレエを中心に、タップやさまざまなダンスを通して描かれるのは、第二次世界大戦を終えたパリに生きる若者たちの恋と友情の物語だ。画家を志すジェリー、作曲家のアダム、資産家の御曹司のアンリ、そしてバレエダンサーのリズ。物語が進むにつれて、それぞれに夢を持った彼らは、いずれも心に戦争の傷跡を抱えていることに気づく。

戦争の傷跡をそれほどリアルに描くことはしなかった映画版に対し、ウィールドンは「戦争の闇の中から愛と友情を描きたかった」とのこと。その思いは終戦から新たな時代のパリへと移り変わるドラマチックなオープニングから、希望を感じさせるラストまで貫かれ、大人の心にずしりと響く作品となっている。各所に優れたドラマがあり、何よりバレエとミュージカルが融合した素晴らしいエンターテイメントだ。ぜひこの感動を劇場で体感してほしい。

パリのアメリカ人
2021年10月15日(金)より全国順次限定公開!
東劇(東京)、なんばパークスシネマ(大阪)、ミッドランドスクエア シネマ(名古屋)ほか

画像: 『パリのアメリカ人』 youtu.be

『パリのアメリカ人』

youtu.be

歴史にのこるアカデミー賞受賞映画、名作恋愛ミュージカルを舞台化!トニー賞に輝く、ブロードウェイ・プロダクションとキャストが贈る、最上級ブリティッシュ・エンタテインメント!

【ストーリー】
主人公ジェリー・マリガン(ロバート・フェアチャイルド)は、アメリカ人の退役軍人。戦争が終結し、多くの希望やチャンスに満ちあふれたパリで、画家を目指している。ジェリーが若く美しいダンサー、リズ(リャーン・コープ)と運命的な出会いを果たすと、終戦後のパリの街並みを背景に、芸術や友情、恋をめぐる官能的かつ現代的なロマンスが展開する。

©2018 Swonderful Rights Limited
©BroadwayHD/松竹
〈英国/2018/ビスタサイズ/139分/5.1ch〉日本語字幕スーパー版

配給:松竹

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