2012年ロンドンオリンピック開会式の映像監督ティム・ヴァン・ソメレン、「オズの魔法使い」の芸術監督や「不思議の国のアリス」などの演出経験を持つレイチェル・カヴァノーらが異彩を放つ大人気ミュージカル『ザ・ウィローズ The Wind in the Willows』。いよいよ、2022年7月8日(金)より全国順次限定公開される。(文:宇田夏苗)
カバー画像:『ザ・ウィローズ The Wind in the Willows』より ⒸMarc Brenner

児童文学の名作から生まれたミュージカル

画像1: 『ザ・ウィローズ The Wind in the Willows』 ⒸMarc Brenner

『ザ・ウィローズ The Wind in the Willows』

ⒸMarc Brenner

トニー賞受賞の『キンキーブーツ』『パリのアメリカ人』をはじめ、近年のブロードウェイの話題作を届けてきた松竹ブロードウェイシネマ。日本初上陸となる『ザ・ウィローズ The Wind in the Willows』は、さらなる演劇への扉を開けてくれる作品だ。

まず、原作の力に言及したい。『ザ・ウィローズ The Wind in the Willows』というタイトルは知らなくても、「たのしい川べ」と聞いて、子どもの頃に読んだことを思い出す方もいるのではないだろうか。

イギリスの作家ケネス・グレーアムが1908年に発表した原題「The Wind in the Willows」。日本では名訳者・石井桃子氏による翻訳版(1963年)で広く親しまれ、新訳版や挿画版も出版されている。世界的にも挿絵違いで多くのバージョンが存在する児童文学の名作のひとつだ。

静かな川べで暮らすモグラやカワウソ、わがままで好奇心旺盛なカエルなど、動物たちがくりひろげる事件を描いた話からは、自然の匂い、動物たちの息づかいが伝わってくる。グレーアムの小さな生き物たちへの眼差しは、自然との共生が謳われる今、先見性を感じるほど。過去にたびたび映像化されているのは、原作の持つ普遍性ゆえだ。

映像化作品として有名なのはディズニーが1949年にアニメーション化した『イカボードとトード氏』があげられるが、日本では未公開のままだった(現在、ディズニープラスで視聴可)。他にも1996年に英国のコメディ俳優テリー・ジョーンズが監督した実写版も作られているが、これも残念ながら日本では未公開だった。

画像2: 『ザ・ウィローズ The Wind in the Willows』 ⒸMarc Brenner

『ザ・ウィローズ The Wind in the Willows』

ⒸMarc Brenner

子どもはもちろん、大人の観客も虜にする舞台

子どもの読み物が原作というだけで、子ども向けのミュージカルでは? というのは大きな誤解。児童文学、ファンタジーの国であるイギリスは、数々の児童文学をもとにした演劇が盛んである。

近年では「ハリー・ポッター」、日本でもロングセラーの「マチルダ」(「マチルダは小さな天才」)が舞台化され、イギリス演劇界の最高峰ローレンス・オリヴィエ賞を受賞。本格的な大人の舞台ファンからも高い評価を得ている。『ザ・ウィローズ The Wind in the Willows』もそうした流れの中にある作品なのは、現地の反響が示している。

多くの人にとって『The Wind in the Willows』は、本のファンであろうと、数え切れないほどの映画化作品のファンであろうと、お気に入りの作品だ。ロンドンのパラディウム劇場で、新たな観客はのどかな田園風景を舞台にしたあたたかな友情の物語を楽しむことができる。
―London Theater Direct.com―

レイチェル・カヴァノーは、信頼できる作曲・作詞コンビのジョージ・スタイルズとアンソニー・ドリューの口ずさめるような耳触りの良い曲を使い、巧みで陽気なショーを演出した。カンパニーは、子供も大人も必ず気に入るこのショーにすべてを注ぎ込んでいる。
―BritishTheatre.com―

トードは資本主義の地主であり「財産は盗みだ」と宣言する略奪者であるウィールズの憎しみの対象である。しかし、この作品の根底にあるのは、田舎暮らしと友情の報酬に対するノスタルジックな賛美なのだ。
―BroadwayWorld―

飛び出す絵本のような楽しさ!

画像3: 『ザ・ウィローズ The Wind in the Willows』 ⒸMarc Brenner

『ザ・ウィローズ The Wind in the Willows』

ⒸMarc Brenner

カワウソが春の訪れを歌う幕開けから、登場する擬人化されたキャラクターたちは人間味にあふれてチャーミングだ。動物たちの衣裳にもぜひご注目を。ボーイスカウトファッションのハリネズミ一家、ボーダーニットがかわいいカワウソたち、おしゃれで思わず欲しくなるツバメのバッグなど、ファッションショーを見ているようだ。

破天荒なミスター・トードを軸に展開するストーリーは、ほのぼのとした始まりから予想もつかないほどスリリング。声高ではなく、友情や家族の大切さ、社会に対する皮肉も込められている。名優ルーファス・ハウンドが演じるトードは傍若無人なのに、憎めないというより目が離せない!

画像4: 『ザ・ウィローズ The Wind in the Willows』 ⒸMarc Brenner

『ザ・ウィローズ The Wind in the Willows』

ⒸMarc Brenner

「メリー・ポピンズ」のクリエイターチームによる音楽はバラエティに富み、トードが自己中に歌うシーンはロックのショーのようで、ダンスも満載だ。

満載といえば、乗り物。トードとイタチの親分チーフ・ウィーズルとの攻防が繰り広げられる間には、船に汽車、さらにラストにはびっくりする仕掛けまで盛りだくさんだ。

さすが演劇の国イギリス! と感じるのは舞台美術。映像に頼らず、セットで四季の移ろいが見事に表現されていく。どのシーンもカラフルで、飛び出す絵本を見ているようなワクワク感がある。観客の想像をかきたてる舞台は、PLAY(芝居)でありプレイ(遊び)に満ちている。

ラストは大団円。何より印象的なのは、劇場に響く子どもから大人までの笑い声だ。理屈ではなく、自然と笑顔になっている。

そんな現地の臨場感まで味わえるのは、松竹ブロードウェイシネマならでは。役者たちの芸達者ぶりに笑い、唸り、拍手をし、劇場を後にする時には、軽快にスキップを踏んでテーマソングを口ずさんでいることだろう。

画像7: 『ザ・ウィローズ The Wind in the Willows』 ⒸMarc Brenner

『ザ・ウィローズ The Wind in the Willows』

ⒸMarc Brenner

ザ・ウィローズ The Wind in the Willows
2022年7月8日(金)より東劇(東京)、なんばパークスシネマ(大阪)、ミッドランドスクエア シネマ(名古屋)ほか全国順次限定公開

画像: 『ザ・ウィローズ』予告編 youtu.be

『ザ・ウィローズ』予告編

youtu.be

── みんなといっしょなら、こわくない! いつか、夢をかなえよう!

オリンピック開会式の映像監督と「オズの魔法使い」芸術監督・「不思議の国のアリス」演出家が放つ、大人気の英国ミュージカル! ゆかいな仲間たちが、“猛スピード”でお届けします!

<作品概要>
イギリスを代表する作家、ケネス・グレーアムの世界的に大人気児童文学作品、待望のミュージカル化!『メリー・ポピンズ』の脚本家と音楽家による、エンターテイメント界屈指のクリエイター書きおろし作!

<ストーリー>
破天荒なミスター・トードの屋敷に、チーフ・ウィーズルとギャングたちが襲い掛かる。果たして、ミスター・トード、モール、ラッティー、バジャーとミセス・オッターは、この危機を乗り越えられるのか!? 沢山の動物たちが繰り広げる、冒険と夢の物語。「仲間」たちも加わり、スリリングな旅が待ち受けている。さあ、あなたも、スーパーカーに飛び乗り、一緒に出掛けよう!

配給:松竹 ©BroadwayHD/松竹
〈英国/2017/ビスタサイズ/131分/5.1ch〉 日本語字幕スーパー版

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