カバー画像:『ジャニス・ジョプリン』より ※日本初公開写真 ©Jason Niedle
松竹ブロードウェイシネマ新人女子部員ブログ『マイブロードウェイ』。洋楽・ミュージカル映画好きなアラサー女子がミュージカルについて気ままにおしゃべり。歌やダンス、演技や衣装などなど…心躍るミュージカルの世界に没頭していきます。
この世界には素敵な音がたくさん存在する
今日は夏のような暑さでですが、週末から来週にかけて雨予報ですね。ちなみに今年は例年より早く梅雨入りするみたいですよ。
雨が降ると洗濯物が乾きにくく「ジメジメしていやだなぁ…」とつい思ってしまいがちですが、雨の音に耳を傾けてみるとなかなか癒されるものです。雨の音にはリラックス効果があるようで、快適な睡眠やストレス緩和にも効果が期待できるみたいですよ。
他にも波の音や鳥のさえずり、川のせせらぎなど自然界には気持ちを癒してくれる音がたくさんありますね。できるものなら山奥やリゾート地に行って、思いっきり自然のセラピーを受けたいところです。
音の種類は異なりますが、私はよくYouTubeやInstagramなどでASMR※の動画を見て気分転換をしています。
ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)とは?
聴覚や視覚への刺激によって感じる反応で、脳がゾワゾワするような心地良い感覚のこと
パリッとしたフライドチキンをむしゃむしゃ食べる音や、カリカリのいちご飴にかじる音、スライムをこねたりする音などたまらないです!(笑)
自然のセラピー音とはまた違った良さがあり、聴けば聴くほどハマってしまい、つい時間を忘れて見てしまいます。。
さまざまな音には癒しの効果がありますが、音楽は聴く人の気分すら変えてしまう力がありますね。バラードを聴くと悲しみが消え、ロックを聴くと勇気が出て、ポップを聴くと心が晴れるような気持ちになります。
そんな気持ちを盛り上げてくれるのが、なんと言ってもシンガーたちの歌声!
今回注目したいのが、伝説のロックシンガー ジャニス・ジョプリンです。彼女のソウルフルでロックな歌声は、たくさんの人々の心に絶大なるパワーを与えました。
唯一無二のスタイルに多くのファンが魅了され、世界 はもちろん、日本 でもたくさんのアーティストに影響を与え続けています。
なぜ彼女の歌声はここまで人々を惹きつけるのか?その秘密は“世界最高の倍音”という彼女のキャッチコピーにあるのではないでしょうか。
今回は、ジャニス・ジョプリンの歌声に注目しながら、彼女がどんなにすごいシンガーなのか、お話していきたいと思います。
観客にエネルギーが届けられるシンガーたちの秘密とは?
まずはじめに、彼女のキャッチコピーにある“倍音”とは何か、簡単にお話したいと思います!
世の中にあるすべての音は「大きさ」「高さ」「音色」の3つの要素で構成されています。それぞれの特徴は以下の通り。
音の大きさ
空気の振動する大きさに比例している。振動が大きいほど音が大きく、小さいほど音が小さくなる。
音の高さ
音の振動が1秒間でくり返す回数を周波数(ヘルツ(Hz))と言い、周波数の高さで音の高さが決まる。
音色(今回はここに注目!)
音の質を表現するために用いられる用語。音の高さを決める「基音」に「倍音」が加わって音色になる。倍音は「基音の整数倍」の振動で、倍音の量により音色に違いが生まれる。
こちらにある通り、倍音とは音色を決める『音の成分』のひとつを指します。違う楽器で同じ音階を鳴らしても別の音色だと認識するのも、「この人の声特徴的だな」と思ったり「この人の歌声素敵!」と感じたりするのもこの倍音の存在があるからなのです。
ちなみに、この倍音は2種類に分かれ、歌声の特徴もそれぞれで異なります。倍音を多く含む国内外の歌手や芸能人も挙げてみました↓
整数次倍音
基音の振動に対して整数倍の周波数を持つ音
歌声での特徴:ハリがあり、キリッとしたパワフルな歌声など
整数次倍音を多く含む歌手や芸能人
▶︎美空ひばり、郷ひろみ、浜崎あゆみ、B'z稲葉浩志、黒柳徹子、ジョン・レノン、ボブ・ディラン など
非整数次倍音
基音の振動に対して不規則な周波数を持つ音
歌声での特徴:ざらっとしたハスキーボイスや、やさしいウィスパーボイスなど
非整数次倍音を多く含む歌手や芸能人
▶︎桑田佳祐、宇多田ヒカル、中島美嘉、明石家さんま、P!nk(ピンク)、エド・シーラン、ブルーノ・マーズ など
整数次倍音を多く含む歌手は、ガツンとしたエネルギッシュな歌声が特徴で、強く引っ張っていってくれるような印象です。
対して非整数次倍音を多く含む歌手は、ザラザラとしたエモーショナルな歌声が特徴で、感情に訴えかけるような印象ですね。
つまり、倍音が多く含まれた歌声は輪郭がはっきりしており、歌のエネルギーがしっかりと観客に届きやすいため、共鳴したり惹きつけられたりする、ということになります。
ジャニス・ジョプリンの歌声は非整数次倍音が多く含まれており、その歌声はまさに唯一無二!ハスキーでロックな歌声には、パワフルな強さがありながらも、感傷的で観客に寄り添ってくれるような奥行きがあります。
このような歌い方を続けるとどうしても体力に限界が出て、歌い続けることさえ難しくなることが多いですが、ジャニス・ジョプリンはしっかりとバランスを保ち巧みに歌い上げています。
だからなのか、彼女のステージパフォーマンスを見ると、まるで観客のために自分の命を削っているかのようにも思えます。この世の嘆きをすべて詰め込んだかのような歌声に共感が止みません。
これほどまで哀愁にどっぷりと浸かれることはないと私は思います。彼女のことを知らなくても、彼女の歌声を聞いた途端、釘付けにならない人はいないはずです。
嘆き、訴えかける歌声は、人々の心を鷲掴みにする。これこそ、世界最高の倍音と称される理由なのではと思います。
50年の時を経て蘇る“世界最高の倍音”
そんな彼女をミュージカル・ショー『ジャニス・ジョプリン』で再現した主演女優メアリー・ブリジット・デイヴィスもすばらしい!歌声はもちろん、巧みな息遣いやパフォーマンスは、まさにジャニス・ジョプリンさながらです。
本作は、ジャニス・ジョプリンの数々の名曲を熱唱し、彼女が影響を受けた5人のアーティストと共にステージ披露をする内容となっています。
迫力のあるパフォーマンス以外にも幼き頃の思い出を語る構成もあり、まるで彼女の人生の物語を見ているような楽しみもあります。
歌声と語りを聴くと、どうしてだろうか、他人事とは思えないような感情が巻き起こり、彼女のことを昔からよく理解してくれる友人、もしくは悩みを打ち明けたくなる母親のように思えてしまいます。
きっと私と同じような感情になった人がたくさんいると思います。故に、トニー賞にもノミネートされるのも納得です!
『ジャニス・ジョプリン』は、2021年7月2日(金)より全国順次公開です。
50年の時を経て蘇る“世界最高の倍音”この夏ぜひ劇場で堪能してみてくださいね!
ジャニス・ジョプリン
2021年7月2日(金)より全国順次公開!
ストーリー
元祖・音楽フェスティバルの女王にして伝説のロック・スター、ジャニス・ジョプリン。数々の名曲をジャニスが熱唱し、彼女が音楽的にも影響を受けたアレサ・フランクリン、エタ・ジェイムス、オデッタ、ニーナ・シモン、ベッシー・スミスと共に感動のステージを披露する。「孤独」と生涯戦ったジャニス・ジョプリン。そんな中、ジャニスが自らの物語を語り始める。
ではまた次回お会いしましょう!